倍速視聴の予言者・稲田豊史とは?タイパ社会を暴く名著と現在
倍速視聴の予言者・稲田豊史とは?タイパ社会を暴く名著と現在に関する基本知識を徹底的にまとめました。要点を確実におさえることができます。
稲田氏の論考の中で極めて重要な概念が、「コンテンツのデータ化(情報化)」です。かつて映画や音楽、小説などの芸術作品は、鑑賞者が時間をかけて体験し、感情の揺らぎや余白を味わう「体験型消費」の対象でした。
しかし、スマートフォンと定額制動画配信サービス(サブスクリプション)が普及し切った生活圏において、可処分時間に対する作品供給量は天文学的な数字に膨れ上がりました。その結果、作品は「味わうもの」から「効率よく摂取すべき情報」へと変貌を遂げていきます。稲田氏はこの実態を次のようなメカニズムとして整理しました。
・タイムパフォーマンス(タイパ)の偏重:最小の時間で最大の成果(あらすじ把握や感情の山場)を得ようとする合理性追求。
・セリフで全てを説明する作品の増加:「ながら見」や倍速再生でも理解できるよう、登場人物のモノローグや説明セリフが過剰化する制作側の適応。
・ネタバレの事前受容:「鬱展開」や「好みに合わない結末」に時間を費やすリスクを恐れ、あらかじめ結末を調べてから見る「失敗回避志向」。
ファスト映画の摘発や倍速機能の標準化を経た今なお、人々がショート動画のスクロールを止められない背景には、この「情報処理としてのコンテンツ消費」が不可逆的に進行している現実があります。