奇脈とは?吸気時に血圧が急低下する原因と測定法・危険な疾患を徹底解明
奇脈とは?吸気時に血圧が急低下する原因と測定法・危険な疾患を徹底解明について知っておくべき 注意点を厳選して解説いたします。
奇脈の存在を客観的な数値として把握するためには、漫然と自動血圧計のボタンを押すだけでは不十分です。一般的な電子血圧計は複数回の心拍の平均値をアルゴリズムで算出するため、呼吸性の変動を見落としてしまう構造的限界があるからです。確実な判定には、手動式のアネロイド血圧計(または水銀柱血圧計)と聴診器を用いた正確な奇脈 測定方法の習得が欠かせません。
臨床現場で実践する標準的な測定手順は以下の4ステップです。
- 通常呼吸の指示と加圧:患者に深呼吸をさせず、できる限りリラックスした「普段通りの呼吸」を維持してもらいます(過呼吸や深呼吸をさせると生理的変動が10mmHgを超え、偽陽性となるため)。マンシェットを上腕に巻き、橈骨動脈の脈拍消失点より20〜30mmHg高く加圧します。
- ゆっくりとした減圧(呼気時コロトコフ音の特定):排気バルブを緩め、1秒間に2〜3mmHgという極めて緩徐なスピードで減圧していきます。やがて、呼吸サイクルのうち「呼気相(息を吐いたとき)だけ」かすかにコロトコフ音(血管音)が聞こえ始めます。この呼気時のみ音が聴取された最高圧の数値を正確に記憶します(地点A)。
- 減圧の継続(全時相コロトコフ音の特定):さらに同様の速度で減圧を続けると、音量が徐々に大きくなり、やがて「吸気時も呼気時も関係なく、すべての心拍で」規則正しいコロトコフ音が聴取できるようになります。この全時相で音が聞こえ始めた血圧値を記録します(地点B)。
- 差分の算出と判定:地点Aから地点Bを差し引いた数値(mmHg)を算出します。この差が10mmHg以上であれば「奇脈陽性」と判定されます。
急性期医療や病棟における奇脈 看護の現場では、聴診法と並行してモニター波形の変化にアンテナを張ることが推奨されます。動脈ライン(Aライン)が確保されているICUや手術室の環境であれば、モニター上に表示される動脈圧波形の頂点(収縮期圧)が、患者の自発呼吸の吸気相に合わせて目に見えてスイングする「呼吸性変動(スイング)」としてリアルタイムに観察できます。
また、一般病棟や救急初療室であっても、指先に装着したパルスオキシメーターの脈波波形(プレチスモグラム)が強力なスクリーニングツールになります。息を吸うタイミングで脈波の振幅が明らかに縮小・平坦化する現象は、奇脈を強く疑う視覚的手がかりです。「患者の呼吸が荒く、酸素飽和度モニターの脈波が吸気時に小さくなる」という気づきから心エコー検査を急ぎ、急性心タンポナーデのドレナージ処置に直結して命を救ったケースは臨床現場の報告でも枚挙にいとまがありません。