終末期医療とは?緩和ケアとの違いや費用、延命治療の判断を徹底解説
終末期医療とは?緩和ケアとの違いや費用、延命治療の判断を徹底解説とは一体何なのか? 主要なファクトを整理してお届けします。
臨床の現場において、医師や家族が最も苦悩を強いられるのが「延命治療の判断基準」と「どこまで医療介入を行うか」という境界線です。かつては当たり前のように行われていた胃ろう造設や気管切開、人工呼吸器の装着について、近年は本人の生活の質(QOL)を著しく損なう恐れがある場合、差し控え(見合わせ)や開始後の離脱が議論されるようになりました。 延命治療の是非を巡る大きな争点となるのが、DNR(Do Not Resuscitate:蘇生不要指示)です。心肺停止に陥った際、心臓マッサージ(胸骨圧迫)や電気ショック、気道確保による人工呼吸を行わないという医療上の合意を意味します。かつては終末期がん患者を中心に運用されていましたが、超高齢社会の進展に伴い、老衰や重度認知症の患者に対しても適用の検討が増加しています。 しかし、現場ではDNRの倫理的課題が常に渦巻いています。医療スタッフの間で「DNR=一切の医療処置を放棄する」という誤った解釈(いわゆるAll or Nothingの思考)が起き、本来施されるべき肺炎の抗菌薬治療や十分な輸液、疼痛管理までが過剰に制限されてしまうリスクが指摘されています。DNRはあくまで「心停止時の不可逆的な強烈な侵襲を避けるための合意」であり、生きている間のケアを省略する免罪符ではありません。 また、社会的に混同されがちな「尊厳死と安楽死の違い」についても厳密な理解が必要です。 尊厳死とは、不治かつ末期の状態において、無理な延命治療を差し控えたり中止したりすることで、人間としての尊厳を保ちながら自然な死を迎える行為(消極的安楽死と呼ばれることもあります)を指します。現行の日本法において、明確な尊厳死法は制定されていませんが、ガイドラインに沿った適切な手順を踏むことで違法性は阻却されるのが通説です。 これに対し、純粋な意味での安楽死(積極的安楽死)は、耐え難い肉体的苦痛から逃れるため、医師が致死薬の投与などを行って意図的に死期を早める行為を指します。スイスやオランダ、カナダなど一部の国では法制化されていますが、日本では刑法第202条の自殺関与・同意殺人罪に抵触する犯罪行為です。過去の司法判断(東海大学病院事件判決など)においても極めて厳格な要件が示されており、現在の日本の臨床現場で安楽死が認められる余地はありません。