預言者ムハンマドの生涯と実像|神の啓示と知られざる素顔を解明
預言者ムハンマドの生涯と実像|神の啓示と知られざる素顔を解明の見逃せないポイントをわかりやすく整理しました。
世界史の教科書や美術館でムハンマドの肖像画を目にする機会が極めて少ないことには、イスラム教の根幹をなす明確な神学的理由が存在します。
イスラム教における偶像崇拝禁止(シルク=神に同等のものを並べる罪の排除)は、ユダヤ教やキリスト教以上に徹底されています。神(アッラー)は超越的な存在であり、形あるものに描写すること自体が冒涜とみなされます。さらに、預言者ムハンマド自身についても、後世の人々が彼を「神の子」や「崇拝の対象」として神格化することを防ぐため、姿形を描くことや像を建てる行為が固く戒められてきました。
中世ペルシアやオスマン帝国の細密画(ミニアチュール)においては、歴史的場面を記録するためにムハンマドが描かれる例もありますが、その場合でも顔の部分に白いヴェールをかけたり、燃え盛る光炎で覆ったりするなど、個人の容貌を直接描写しない厳格な配慮が施されています。
また、彼が「最後の預言者(ハータム・アン=ナビイユーン)」と呼ばれる背景には、以下のような思想的論理があります。
- 啓示の完全性:アダム以来の歴代預言者を経て、神の最終メッセージが『コーラン』としてアラビア語で歪みなく完結したため、これ以降に新たな預言者が現れる余地はない。
- 人間の自立:預言者の時代は終わり、以後は遺された啓典(コーラン)と預言者の言行録(スンナ)を指針として、人間自身が理性と共同体の合意をもって社会を運営していく責任がある。