正月を彩った海老一染之助・染太郎「余計に回しております」の真実
正月を彩った海老一染之助・染太郎「余計に回しております」の真実の見逃せないポイントを一挙に解説しました。
あのお馴染みのセリフ「おめでとうございます!いつもより余計に回しております!」は、単なるギャグのフレーズではない。実は、過酷な稽古と確かな兄弟の絆から生まれた結晶だった。
実際に傘の上で品物を回す弟の海老一染之助は、高座やテレビ画面の前で常に全神経を集中させていた。和傘の傾き、風の吹き具合、ボールや枡(ます)の重心を見極める作業は一瞬の油断も許されない。その緊迫した空気感を一変させ、観客を一気に爆笑と祝福の渦へと巻き込んだのが、兄である海老一染太郎の合いの手だった。
染太郎は拍子木を打ち鳴らし、「おめでとうございます!」「お兄さん、もっと回して!」と大声で囃し立てる。一見すると弟ばかりが危険な技を披露し、兄は楽をしているようにも見えた。しかし、これこそが緻密に計算された二人の絶妙な役割分担だったのだ。弟が技に集中できるよう視線や観客の注意を引きつけ、緊張感を和らげる演出。弟の染之助も生前、「兄のあの一言があったからこそ、技が何倍も華やかになった」と語っていた。徹底的に磨き抜かれた技と、互いを引き立て合う兄弟の熱い信頼関係こそが、あの唯一無二の芸を生み出していたのである。