にわかせんぺいの真実を暴く|Cm秘話とお面・店舗まで徹底解剖
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多くの旅行者が最初に抱く疑問が、「なぜ『せんべい』ではなく濁点のない『せんぺい』と発音するのか」という点です。日本の菓子分類において、一般的に「煎餅(せんべい)」といえばうるち米を原料とした米菓を指します。しかし、にわかせんぺい本舗 東雲堂(明治39年・1906年創業)が焼き上げる生地の主原料は、小麦粉、砂糖、そして鶏卵です。
九州地方、とりわけ海外貿易の窓口であった長崎や博多には、古くから南蛮渡来の製糖技術や小麦粉を使った焼き菓子文化が根付いていました。米を主原料とする塩味・醤油味の「せんべい」と明確に区別するため、小麦粉と砂糖を練り上げて甘く香ばしく焼き上げた南蛮風の平焼き菓子を、九州では濁らずに「せんぺい」と呼び習わしてきた言語的背景があります。東雲堂の初代当主・高木三次郎氏は、この伝統的な製法を活かしながら博多ならではの菓子を模索しました。
そこで意匠のモチーフとなったのが、福岡市指定無形民俗文化財として愛される郷土芸能博多仁和加(はかたにわか)の歴史です。博多仁和加は、平安末期から江戸時代にかけて庶民の間で自然発生した即興の風刺寸劇であり、世相の矛盾や権力者への鬱憤をユーモアと気の利いた掛け合い(落ち)で笑い飛ばす大衆芸能でした。演者は身元を隠し、誰であるかを曖昧にして自由闊達に発言するため、目の部分だけをくり抜いた独特の「ぼてかずら」と「半面(にわか面)」を着用する決まりがありました。この反骨精神と笑いの象徴である半面をそのまま焼き型に落とし込み、人々に笑顔を運ぶ菓子として世に送り出したのが、二〇加煎餅の誕生の原点です。