ジャンヌ・ダルク名画の嘘と真実|後世の美化と生前の素顔を徹底追跡
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驚くべきことに、ジャンヌ・ダルクの生前に描かれた本物の肖像画は1点も現存していません。1431年に19歳という若さで火刑に処されるまで、肖像画のモデルとしてポーズをとった記録自体が存在しないのです。
彼女と同時代に描かれた唯一の視覚資料と呼べるものが、パリの国立古文書館に保管されている1429年の公文書の余白スケッチです。オルレアン解放の報せを受けたパリ高等法院の書記官クレマン・ド・フォコンベルグが、議事録の欄外にペンを走らせた小さな落書きでした。しかし、この書記官自身もジャンヌ本人に会ったことはなく、噂をもとに想像で描いたため、女性用のドレスを着て剣と旗を手にした姿というチグハグな描写になっています。
裁判記録や当時の兵士たちの証言を総合すると、ジャンヌ・ダルク生前の素顔と真相は絵画のイメージとは大きく異なります。実際には黒髪のショートカットで、農民らしい筋肉質で頑強な体躯をしていました。過酷な軍務に耐えうる並外れた体力と、戦場の喧騒を突き抜けて兵士を鼓舞するよく通る声を持った、極めて実戦的な指揮官だったことが判明しています。