平安でモテる顔は現代と真逆?下膨れと引目鉤鼻が絶世美女の決定打

平安でモテる顔は現代と真逆?下膨れと引目鉤鼻が絶世美女の決定打について徹底解説いたします。専門家の見解をお届けします。

平安美女を象徴するもう二つの強烈な要素が、「お歯黒(おはぐろ)」と「引眉(ひきまゆ)」だ。現代人の感覚から見れば「なぜわざわざ自前の眉を抜き、歯を真っ黒に染めるのか」と奇異に映るかもしれないが、この特異な化粧法にも当時の貴族たちが追求した極めて合理的な理由が存在していた。

まず、お歯黒の理由について検証してみよう。主原料は、酸化した鉄片を酢や酒に漬け込んで作られた「鉄漿水(かねみず)」に、五倍子粉(ふしのこ/ヌルデの虫こぶの粉末)を混ぜ合わせた液体である。これを歯に塗布すると、タンニンと鉄分が結合して漆黒の被膜を形成する。貴族の女性たちは、肌を極限まで白く見せるために水銀や鉛を含む白粉を厚く塗り重ねていた。しかし、肌を白く塗り固めるほど、人間の生まれつき黄色みを帯びた歯は不潔に黄ばんで見えてしまう。

暗がりの中で口を開けた際、不自然に浮き上がる歯の色を隠し、コントラストを強調して漆黒の空間に溶け込ませるために、歯を黒く染め上げる手法が定着した。さらに、近年の歯科医学的な研究調査でも判明している通り、鉄漿に含まれるタンニンとフッ素様物質には強力なエナメル質強化作用と虫歯予防・歯槽膿漏防止効果があった。美観の追求と実用的な口腔衛生の双方が結びついた結果がお歯黒であった。

一方、眉毛をすべて抜き去り、額の高い位置に薄墨で丸く描く引眉の真相は、心理学や社会学の観点からも極めて興味深い。眉は、人間の感情(怒り、悲しみ、驚き)が最もダイレクトに表出する部位である。感情を露わにすることを「卑しい」「教養がない」と見なした平安貴族の美意識において、生来の眉を抹消することは、情動の揺らぎを他者から読み取らせないための「仮面」を作る行為に他ならなかった。

額の高い位置に丸くぼかした眉を配置することで、顔全体の重心が下がり、常に穏やかで幼げな、優美な表情を固定化することが可能になった。感情を秘匿し、泰然自若とした気品を漂わせることこそが、宮廷社会を生き抜く女性たちに求められた必須の嗜みだったのである。

中川 明日香

中川 明日香

ビジネス戦略アナリスト

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。

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