上用饅頭とは?薯蕷饅頭との違いや原料の秘密・慶弔マナーの真相
上用饅頭とは?薯蕷饅頭との違いや原料の秘密・慶弔マナーの真相についての真相をご紹介します。
なぜ「薯蕷」という漢字ではなく「上用」と書くようになったのか。その背景には、身分制度と宮廷文化が色濃く残る日本の歴史があります。
上用饅頭の名前の由来は、江戸時代に武家社会や宮中、幕府への献上品を意味する「お上用(御上用)」として納められた史実に直結します。当時、砂糖はもちろんのこと、粘りの強いつくね芋や極めて精製度の高い米粉は庶民が日常的に口にできる代物ではありませんでした。権力者や貴族だけが口にすることを許された特権階級の菓子であったことから、敬意と格式を込めて「上用」の字が定着したと伝えられています。
そして、お祝い事に選ばれる理由と歴史にも明確な意味が存在します。山芋は古来、地中深くにしっかりと根を張り、強靭な生命力を持つことから「無病息災」「延命長寿」「子孫繁栄」の象徴と見なされてきました。さらに、蒸し上がった生地の透き通るような白さと、中の小豆餡が持つ赤色(古来より魔除けの色とされる)のコントラストは、神聖な吉祥の象徴として婚礼や出産、叙勲などの慶事に欠かせない存在となったのです。
この研ぎ澄まされた素朴さは、茶道の世界でも頂点に君臨します。千利休が大成した茶の湯において、濃茶を服する前に出される茶席の主菓子としての格式において、上用饅頭は常に最上位に位置付けられます。色鮮やかな細工を施した練り切りとは対照的に、純白の肌に職人の指先一つで陰影をつけただけの薯蕷饅頭は、一切の虚飾を排した「侘び・寂び」の極致です。職人の腕の良し悪しが皮の気泡一つ、火加減一つで露骨に現れるため、和菓子職人にとっては生涯をかけて極める究極の試金石でもあります。