『ころべばいいのに』なぜ大人に刺さる?嫌悪感を消す痛快な処方箋

『ころべばいいのに』なぜ大人に刺さる?嫌悪感を消す痛快な処方箋についての最新情報をお届けします。

『ころべばいいのに』が「大人のための哲学書」と称される最大の理由は、中盤から提示される「感情の切り離し」のロジックにあります。女の子は妄想を重ねるうちに、ある決定的な真実に思い至ります。「嫌いなやつのことを考えている間、自分の大切な時間が全部そいつに奪われているのではないか」という気付きです。

心理学における「心理的バウンダリー(境界線)」や、認知行動療法(CBT)における「外在化」の視点が見事に落とし込まれています。相手を変えることはできなくても、自分の意識の主導権を相手から奪い返すことはできます。女の子は、相手を「嫌なやつウイルスに感染してかわいそうな状態の人」と見立てたり、嫌なやつとは関係のない「自分だけの好きなこと」に没頭したりすることで、怒りのループから鮮やかに脱出を図るのです。

職場の上司や理不尽なクライアント、SNSの攻撃的な言説に疲弊している現代の大人にとって、このアプローチはまさに目から鱗の体験となります。相手を憎み続けることは、自分の脳内に嫌いな人物を「家賃無料で住まわせている」ようなもの。その不条理をコミカルなイラストとともに突きつける本作は、現代社会をサバイブするための実践的な嫌いな人の対処法として、多くのビジネスパーソンや親世代の胸を強く打っています。

中村 さくら

中村 さくら

マネー&キャリアエディター

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。

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