ヒグマ生息地域は本州にも?北海道の最新分布マップと危険地帯の真実

ヒグマ生息地域は本州にも?北海道の最新分布マップと危険地帯の真実の疑問点について、専門知識を取りまとめてご紹介します。

インターネット上の掲示板やSNSでは定期的に「本州の山中でヒグマのような巨大な影を見た」「本州にもヒグマが生息域を広げているのではないか」といった言説が拡散されます。しかし、生物学・生態学の厳密な調査に基づけば、野生のヒグマ生息地が本州に存在する事実は一切確認されていません。環境省および関係自治体の公式調査において、本州に定着している大型クマ類はツキノワグマのみです。

では、なぜ本州での目撃談が後を絶たないのでしょうか。取材を進めると、主に3つの背景が浮き彫りになります。

第1に、大型化したツキノワグマの誤認です。一般的なツキノワグマの成獣は体重40〜80kg前後ですが、秋口のドングリやクリを飽食した雄個体の中には、130kgを超える規格外の巨躯に達するものが存在します。薄暗い山林内で突如遭遇した際、目撃者がその圧倒的な威圧感から「ヒグマに違いない」と思い込むケースが多発しています。

第2に、過去に発生した飼育個体の脱走事案や記憶の混同です。昭和から平成期にかけて、東北や北陸の観光クマ牧場などで飼育されていたヒグマが脱走した事故が散発的に報じられた歴史があり、それが「本州の野生下にも潜んでいる」という都市伝説へ変容しました。

第3に、化石記録が示す歴史的事実との混同です。古生物学の研究によれば、後期更新世(約2万〜3万年前)の日本列島には本州にもヒグマが生息していました。しかし、最終氷期の終焉に伴う温暖化や植生の変化、あるいは初期人類による狩猟圧などによって約1万5,000年前に本州のヒグマは完全に絶滅したことが化石調査で立証されています。

この決定的な生息域の分断を決定づけているのが、津軽海峡を境界とするブラキストン線です。イギリスの動物学者トーマス・ブラキストンが提唱したこの動植物境界線により、北側の北海道にはヒグマやエゾシカ、南側の本州以南にはツキノワグマやニホンジカが独自の進化を遂げました。海峡の深さと潮流の激しさは、遊泳能力の高いヒグマであっても物理的に渡河定着することを阻み続けています。

山田 真由

山田 真由

自動車・モビリティライター

暮らしを豊かにする便利アイテムや時短アイデアを中心に、実用的な情報をお届けします。

Share this article
Twitter Facebook Pinterest