月の裏側が見えない理由はなぜ?自転と公転が一致する潮汐固定の真相

月の裏側が見えない理由はなぜ?自転と公転が一致する潮汐固定の真相とはどんな影響があるのか? 背景や要点を丁寧に紐解いて紹介します。

科学が進歩した現在でも、ネット掲示板やSNSでは「月の裏側には異星人の基地がある」「NASAは巨大構造物を発見して隠蔽している」といった都市伝説が根強く囁かれています。知恵袋などでも「裏側が見えないのは、何者かが隠しているからではないか」という素朴な疑問が定期的に投稿されます。

こうした荒唐無稽な噂が定着した最大の原因は、英語圏で月の裏側を指す俗称「ダークサイド(Dark side of the Moon)」という言葉の誤解にあります。

天文学において「ダーク」とは「太陽光が当たらない暗闇」を意味するのではなく、「電波が届かず、地球から見ることができない未知の領域(情報的な暗闇)」を意味していました。しかし、ピンク・フロイドの名盤アルバム『The Dark Side of the Moon(狂気)』の世界的ヒットやSF映画の演出なども相まって、大衆の脳内には「月の裏側は永遠に光の射さない極寒の暗黒世界」という強烈な誤認が植え付けられてしまったのです。

実際のところ、月の裏側にも地球と同じように昼と夜が存在します。月はおよそ27.3日かけて自転しているため、裏側にも約14日間の昼(強烈な太陽光が照りつける灼熱期)と、約14日間の夜(マイナス170度以下に達する極低温期)が公平に訪れています。新月の夜、地球から月がまったく見えなくなっているとき、実は月の裏側は太陽光を全身に浴びた「真昼(満月状態)」を迎えています。

また、アポロ計画時代の宇宙飛行士が月の裏側を通過する際、月の分厚い質量によって地球からの電波が遮断され「通信途絶状態(Loss of Signal)」に陥ることも、オカルトファンの想像力を刺激しました。「通信が切れていた15分の間に宇宙人と交信していたのではないか」「NASAが映像をカットした」という語り口は、密室劇のようなサスペンスを生み出しやすい構造を持っています。しかし、JAXAやNASA、中国の探査機が超高解像度カメラで撮影した何百万枚ものパノラマ写真を見ても、そこに存在するのは数十億年の隕石衝突が刻み込んだ無数のクレーターと乾いたレゴリス(砂)の海だけです。

佐藤 大輔

佐藤 大輔

シニアコンテンツプロデューサー

最新のテクノロジーと生活デザインの融合をテーマに、国内外の最新トピックを発信しています。

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