世界の王貞治の現在と868本塁打の真実|偉業を支えた孤独と哲学
話題沸騰中の 世界の王貞治の現在と868本塁打の真実|偉業を支えた孤独と哲学について、多角的な視点を分かりやすく掲載しています。
通算868本塁打という記録は、数字のインパクト以上に過酷な「自己との対話」によって生み出されたものです。巨人に投手として入団した直後、王氏はプロの壁にぶつかり、打者に転向するも鳴かず飛ばずの時期を過ごしました。夜の街に繰り出しては憂さを晴らす若手時代があり、周囲からは「三振王」と揶揄された時期もありました。
その停滞期を打ち破ったのが、1962年に巨人の打撃コーチに就任した荒川博氏との出会いでした。荒川氏は王氏の悪癖であった「球を迎えにいく癖」を矯正するため、合気道の達人や剣道の師範から着想を得て、右足を高く上げる一本足打法(フラミンゴ打法)を考案しました。
当時の手記やドキュメンタリー番組の回顧録によれば、多摩川グラウンドの合宿所や荒川邸で行われた特訓は「常軌を逸した修練」でした。天井から吊るした糸の先の紙を日本刀で素振りして真っ二つに斬る鍛錬や、足の裏の皮がめくれて畳が血で染まるまでバットを振り続ける日々。王氏自身、のちに自著で「あの時期は寝ても覚めてもバットのことしか頭になく、生きている心地がしなかった」と述懐しています。
しかし、この一本足打法の神髄は精神論だけではありません。投手の重心移動と完全にタイミングを同期させ、体の軸ブレを極限までゼロに近づけるという、当時のスポーツ科学を先取りした高度な力学の結晶でした。結果として1962年7月1日の一本足打法解禁から驚異的なペースで本塁打を量産し、1977年にはハンク・アーロン氏の持つ755本のメジャーリーグ記録を更新。通算868本塁打という、いまだ誰にも破られていない世界最高峰の頂に到達したのです。