突然の顎関節脱臼!顎が外れた時の正しい直し方と戻らない時の対処法
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顎が外れた際、多くの人がネット検索で目にするのが「ヒポクラテス法」と呼ばれる古典的な整復手技である。古代ギリシャの医師ヒポクラテスが確立したこの整復法は、現代の臨床現場でも顎関節脱臼の第一選択として用いられている。しかし、これを「自分でできる簡単な直し方」と錯覚することは極めて危険である。
医療従事者が行うヒポクラテス法の基本手順は以下の通りだ。 まず術者は患者の正面に立ち、両手の親指に厚手のガーゼを何重にも巻き付ける。続いて、その親指を患者の口の奥、下顎の奥歯(大臼歯部)の咬合面に置き、残りの指で外側から下顎の底をしっかりと包み込む。そして、下顎全体をまず真下に向かって強く押し下げ(牽引)、下顎頭が関節結節を乗り越えられる高さを確保した上で、ゆっくりと後方へ押し込む。下顎頭が結節をクリアした瞬間、緊張していた筋肉の収縮力によって、カチリと音を立てて元の位置へ滑り込む。
この手順を聞くと、鏡を見ながら自力でできそうに思えるかもしれない。だが、顎が外れた時に自分で戻す行為には、医療現場が最も警戒する重大な受傷リスクが存在する。
整復される瞬間、強力な閉口筋が反射的に一気に収縮するため、口が凄まじい勢いで閉じる。もし親指に十分な防護ガーゼを巻かずに奥歯を押していた場合、自らの歯、あるいは相手の歯で親指を骨ごと強く噛み砕かれ、最悪の場合は指を切断する大事故へと発展する。また、焦りから力任せに下顎を叩いたり、前後左右に無理やりねじ曲げたりする行為は、下顎頭の骨折や関節包の断裂、神経損傷を引き起こし、一生後遺症に悩まされる結果を招く。
何度も脱臼を経験して関節が緩み切っている「習慣性脱臼」の患者が、医師の指導のもとで軽度の脱臼を自力整復するケースは存在するものの、初発の脱臼や痛みが激しい場合、自力での整復は絶対に試みてはならない。外れた状態のまま数十分から数時間が経過すると、咬筋が激しいスパズム(痙攣)を起こして硬直するため、局所麻酔や筋弛緩薬を用いなければ専門医ですら整復が困難になる。無理にいじくり回さず、直ちに口腔外科へ向かうことが最短の解決策となる。