猫が舐めてくる心理と理由を獣医師視点で解剖|愛情とストレスの境界線
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愛猫の舐める行為を「無条件の愛の証」として全面的に受け入れ、顔中を舐めさせたり口元にキスをさせたりしている飼い主は少なくありません。しかし、医学的な見地からすると、ここには重大な盲点が存在します。それが、パスツレラ症の感染リスクです。
厚生労働省の公衆衛生関連資料および感染症研究データによると、健康な猫の口腔内にはほぼ100%(約97〜100%)の確率で「パスツレラ菌(Pasteurella multocida等)」が常在しています。猫自身にとっては無害な常在菌であっても、人間の体内に入り込むと重篤な人獣共通感染症(ズーノーシス)を引き起こす病原体へと一変します。
猫のザラザラとした舌(糸状乳頭)は、人間の表皮に目に見えない微細な傷を作ります。その微細な擦過傷や、手荒れ、ひび割れ、湿疹などの患部からパスツレラ菌が侵入すると、局所の発赤、激しい腫脹、激痛を伴う蜂巣炎(ほうそうえん)を引き起こします。さらに、免疫力が低下している高齢者、基礎疾患(糖尿病や肝疾患など)を持つ人、乳幼児が感染した場合、菌が血流に乗って敗血症や髄膜炎、骨髄炎へと進展し、最悪の場合は死に至る事例も国内外の医療機関から報告されています。
ネット上の愛猫コミュニティでは「長年口移しで接しているが無症状だから安全」という個人の経験談が散見されますが、これは単に免疫力の高さによって発症が抑えられているに過ぎません。顔や唇を舐めさせる行為、皮膚炎のある患部を舐めさせる行為は、医学的見地からは明確に回避すべきハイリスク行動です。