ウィリス動脈輪の謎に迫る|脳動脈瘤好発の理由と命を守る血流の全貌
ウィリス動脈輪の謎に迫る|脳動脈瘤好発の理由と命を守る血流の全貌に関する専門家の意見を分かりやすく解説いたします。
17世紀の英国の解剖学者トマス・ウィリスによって詳細に記録されたこの構造は、脳底部(トルコ鞍の周囲)を取り囲む六角形の動脈ループです。心臓から脳へ向かう血流は、首の前側を通る左右の内頸動脈(前循環)と、背骨の中を上り一本に合流する脳底動脈(後循環)の合計2系統・4本の主要動脈によって運ばれます。ウィリス動脈輪の役割は、本来なら別々に流れるはずのこれら2系統を結合し、均等な水圧調整弁を築くことにあります。
具体的なネットワークの連結構造は、以下の血管群によって隙間なく構成されています。
- 前大脳動脈(ACA)と前交通動脈(Acom):左右の内頸動脈から伸びる前大脳動脈同士を、短い「前交通動脈」が橋渡しして左右の前頭葉血流を連絡します。
- 中大脳動脈(MCA)への分岐:内頸動脈は動脈輪を形成する直前で、運動・言語領域を広く司る「中大脳動脈」へと太い血流を送り出します。
- 後交通動脈(Pcom):内頸動脈と、後方から立ち上がる後大脳動脈(PCA)を繋ぎ、前後方向の血流迂回路を完成させます。
- 脳底動脈(BA)と後大脳動脈(PCA):左右の椎骨動脈が合流した脳底動脈が左右の後大脳動脈へと分岐し、後交通動脈と結合します。
この巧みな六角形の輪が存在することで、例えば片側の内頸動脈が動脈硬化で急速に細くなったとしても、反対側の内頸動脈や背側の脳底動脈から前交通動脈・後交通動脈を介して血液が逆流・補給されます。局所の虚血を瞬時に補正し、広範な脳梗塞の発症を食い止める極めて合理的なバックアップシステムです。