稀勢の里親方の現在と二所ノ関部屋の育成革命|早大院仕込みの指導論
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なぜ二所ノ関親方は、ここまで徹底して「怪我予防」と「科学的リカバリー」にこだわるのか。その原点は、自らの現役時代の壮絶な苦闘と引退理由にあります。
2017年春場所、稀勢の里は新横綱として土俵に上がり、13日目の日馬富士戦で左大胸筋断裂という力士生命を脅かす大重傷を負いました。満身創痍の状態で強行出場を続け、千秋楽の優勝決定戦で照ノ富士を破り奇跡の逆転優勝を果たした瞬間は、日本中を熱狂と感動の渦に巻き込みました。
しかし、その代償はあまりにも大きく、十分な回復期間を設けないまま出場を続けた結果、本来の圧倒的な左四つの型を失い、8場所連続休場という苦難の日々を送ることになります。そして2019年初場所、3連敗を喫した末に引退を決断しました。記者会見で見せた「一片の悔いもございません」という気高い言葉の裏には、「身体の限界を超えて無理を重ねてしまったことへの構造的な反省」が深く刻まれていました。
「自分と同じような悔しい思いを弟子たちに絶対にさせない」。この強い信念が、過剰な負荷を避けるデータ管理、早期の休養判断、そして無理な増量を排した機能的な肉体改造という、二所ノ関流指導メソッドの出発点となっています。