蹴球とは何のスポーツ?サッカーとの違いと大学部活動の歴史の真相
蹴球とは何のスポーツ?サッカーとの違いと大学部活動の歴史の真相の真相について、専門知識を取りまとめてご紹介します。
「蹴球」の正確な読み方は「しゅうきゅう」です。国語辞典や各種百科事典における定義をひもとくと、「球を蹴る競技の総称」「英語のフットボール(football)の訳語」として位置づけられています。現在ではサッカー単体を指す言葉として用いられる場面が目立ちますが、本来の意味領域はより広大でした。
日本に近代スポーツが伝来した明治から大正にかけて、外来語を漢字2文字の熟語に翻訳する文化が急速に発達しました。ベースボールを「野球」、テニスを「庭球」、バレーボールを「排球」、ビリヤードを「撞球」、ハンドボールを「送球」と命名したのと同様に、ボールを手足で扱うフットボールに対して考案されたのがフットボールの漢字表記である「蹴球」でした。
当時の知識人や若者たちにとって、これらの球技を知ることは文明開化の最先端に触れる体験そのものでした。考現学の創始者として知られる今和次郎が著した『新版大東京案内』(1929年刊行)の中には、次のような象徴的な一節が残されています。
「野球を知らず、庭球を知らず、蹴球を知らぬやうでは〈略〉恥辱を甜めることがある」
大正から昭和初期の東京において、蹴球をはじめとする球技は単なる娯楽にとどまらず、教養人が身につけるべきモダンな嗜みとみなされていたことが窺えます。
ここでしばしば取り沙汰されるのが、平安貴族の伝統遊戯である「蹴鞠(けまり)」と蹴球の関連性です。足で鞠を蹴るという共通点から「蹴鞠が近代化して蹴球と呼ばれるようになったのでは」という俗説が囁かれることもありますが、競技規則や歴史的な系統樹に直接の連続性はありません。蹴鞠は勝敗を争わず相手が受けやすい球を返す「協調の遊戯」であるのに対し、フットボールは陣地と得点を激しく奪い合う「競争のスポーツ」です。ただし、明治期の教育者や翻訳官たちが「football」という見慣れぬ舶来の概念に向き合った際、日本に古くから根付いていた「蹴」の字を充てる文化的土壌が存在していたことは間違いありません。