チェンジボタンの謎と価値|誕生史から年代判別の極意まで徹底解剖
チェンジボタンの謎と価値|誕生史から年代判別の極意まで徹底解剖の概要と注目ポイントを徹底的にカバーしました。
ヴィンテージ愛好家やバイヤーがカバーオールを査定する際、真っ先に確認するのがチェンジボタンの裏側です。留め具の形状や素材の変遷は、衣服自体の製造年代を絞り込むための極めて精度の高い物証となります。
最初期にあたる1900年代初頭から1920年代前半にかけて広く採用されていたのが、チェンジボタン割ピン(コッターピン)と呼ばれるパーツです。機械の軸留めなどに使われる二股の金属ピンをボタン足の穴に通し、先端を左右に折り曲げて抜け落ちを防ぐ仕組みでした。この割ピン留めは非常にプリミティブな構造であり、ピン自体が細いため、現代に残る個体では金属疲労による破損やサビによる固着が目立ちます。
1920年代半ばから1930年代に入ると、より着脱がスムーズでホールド力の高いチェンジボタン留め具リングが登場します。アルファベットの「S」の字を押し潰したようなS字カンや、鍵をまとめるキーリングを極小にしたような二重リング、楕円形のワイヤーリングなどが普及しました。このリング式への移行により、労働者は爪を痛めることなく数秒でボタンを着脱できるようになり、実用性は飛躍的に向上しました。
しかし、この精巧な機構も長くは続きませんでした。1930年代後半から生地に直接圧着する「打ち込み式タックボタン(リベットボタン)」の製造技術が確立され、1940年代の第二次世界大戦に伴う物資統制(大戦モデル)によって金属使用量の削減と生産効率化が強制されたことで、コストと手間がかかるチェンジボタンは一気に作業着の標準仕様から淘汰されていったのです。