被告と被告人の違いはどこにある?刑事・民事の境界線と報道のカラクリ
被告と被告人の違いはどこにある?刑事・民事の境界線と報道のカラクリについて見逃せない 理由を分かりやすい構成で解説いたします。
事件が発生してから裁判が集結するまでのプロセスをたどると、本人の呼び名は3段階(逮捕・起訴・判決確定)で不可逆的に変化します。この変化の背後には、人権保護と国家権力の均衡を図る厳格な法的手続きが敷かれています。
事件直後、警察が捜査の標的とする段階では法律上「被疑者」と呼ばれます。報道では前述の通り「容疑者」です。警察での身柄拘束期間は48時間以内、検察官への送致後は24時間以内に勾留請求が行われ、裁判官が認めれば原則10日間、最大でさらに10日間の延長(通算最大23日間)が認められます。この段階ではまだ犯罪の成立が法的に認定されたわけではありません。
検察官が証拠を集めた結果、「裁判で有罪を立証できる十分な証拠がある」と判断して裁判所へ起訴状を提出すると、その瞬間に立場は「被告人」(マスコミ報道では「被告」)へと昇格・変化します。起訴状が受理された時点で、被疑者段階での身柄拘束期限(23日縛り)は外れ、被告人勾留という新たな法的根拠のもとで身柄が管理されます。この時点で保釈請求の道が開かれる点も大きな実務的差異です。
法廷で審理が尽くされ、第一審、控訴審、上告審を経て判決が確定すると、呼び方は再び変わります。有罪となって実刑が確定すれば「受刑者」「服役囚」となり、執行猶予が付けば刑の執行を猶予された一般市民として社会内で生活します。もし無罪判決が確定すれば、その人物は一切の犯罪嫌疑から法的に解放された「無辜の市民」に戻ります。
ここで極めて重要なのが、有罪確定前呼称ルールと無罪推定の原則です。日本国憲法第31条が定める適正手続きの保障、および刑事訴訟法に内在する近代法の鉄則として、「何人も裁判で有罪が確定するまでは無罪として扱われなければならない」という大原則が横たわっています。起訴されたからといって法的には100%犯人だと決定したわけではなく、あくまで「容疑が濃厚で裁判を受ける立場にある人」という意味で「被告人」と規定されているのです。