子孫のために美田を買わずの真意とは?西郷隆盛の遺訓と相続の教訓

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多くの人が座右の銘として愛唱するこの言葉は、西郷隆盛が詠んだ七言絶句の漢詩『偶感(ぐうかん)』の結句に位置しています。子孫のために美田を買わず 全文は以下の通りです。

【白文】
幾歴辛酸志始堅
丈夫玉碎恥甎全
我家遺事人知否
不爲兒孫買美田

【訓読文】
幾たびか辛酸(しんさん)を経て 志(こころざし)始めて堅し
丈夫(ますらお)は玉砕(ぎょくさい)するも 甎全(せんぜん)を恥ず
我が家の遺事(いじ) 人知るや否や
児孫(じそん)のために 美田を買わず

【現代語訳】
人間というものは、幾度となく辛い苦難や試練を乗り越えてこそ、志が本物となって固まるものだ。真の男子たる者は、玉となって砕け散る名誉ある死を選ぼうとも、無為無策のまま瓦のように生き長らえる(甎全)恥辱を拒む。我が家が代々受け継ぎ、子孫へと伝える家訓を世の人々は知っているだろうか。それは、子孫を甘やかすような肥えた田畑など決して買い残さないことである。

子孫のために美田を買わず 由来の背景には、中国・清朝末期の高官であった林則徐の遺訓が存在するという見解が有力です。アヘン戦争に際して英国と対峙した林則徐は、次のような有名な言葉を遺しました。

「子孫若如我、留銭做什麽、賢而多財、則損其志。子孫不如我、留銭做什麽、愚而多財、益増其過」
(子孫がもし私のように優秀であるならば、財産を残す必要がどこにあるだろうか。賢明な者に過剰な富を与えれば、かえって大志を損なってしまう。子孫がもし私に及ばず愚かであるならば、財産を残して何になろうか。愚かな者に富を与えれば、かえって過ちと堕落を増長させるだけである。)

西郷隆盛はこの思想に深く共鳴し、自身の苛烈な流罪経験や国難の体験と融合させて『偶感』へと昇華させました。後に庄内藩の有志によって編纂された『西郷南洲遺訓』の根底にも、私欲を捨てて公に尽くす「敬天愛人」の精神とともに、この無私の思想が脈々と流れています。

渡辺 美咲

渡辺 美咲

ガジェット&アプライアンスライター

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。

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