呼吸商とは?体内で燃える栄養素を見抜く計算式と1を超える理由の真相
呼吸商とは?体内で燃える栄養素を見抜く計算式と1を超える理由の真相について押さえておきたい 事実を分かりやすい構成で解説いたします。
臨床現場やスポーツサイエンスの最前線で活動する研究者・指導者が最も厳格に区別しているのが、「呼吸商(RQ)」と「呼吸比(RER: Respiratory Exchange Ratio)」の違いです。一般のメディアやフィットネス記事では同義語として扱われがちですが、厳密には明確な境界線が引かれています。
呼吸商(RQ)とは、あくまで「末梢の細胞組織レベル」で行われているガス交換比率です。一方の呼吸比(RER)は、フェイスマスクやマウスピースを装着して「口元(肺呼吸)」で測定した吸気と呼気のガス交換比率を指します。
安静時や安定した低強度の定常状態であれば、細胞で消費された酸素量と肺から取り込まれた酸素量、そして細胞で生まれた二酸化炭素量と肺から吐き出された二酸化炭素量は釣り合うため、「RQ = RER」とみなすことができます。しかし、先述した高強度運動時や、緊張や過呼吸によって二酸化炭素を必要以上に吹き飛ばしてしまう過換気症候群の状況下では、肺から出る二酸化炭素が細胞内の産生量をはるかに超えてしまいます。つまり、1.00を超えて測定機器のモニターに表示されている数値の正体は、組織呼吸商(RQ)ではなく肺呼吸比(RER)なのです。
実際の呼気ガス測定現場を訪れると、その計測は極めてデリケートに行われています。被験者は顔に密着する特殊なシリコンマスクを装着し、流量計(気流計)と高精度ガス分析器(質量分析計やジルコニア式酸素分析計、赤外線式炭酸ガス分析計)が接続されたメタボリックカートの前に立ちます。呼気1呼吸ごとの換気量とO₂・CO₂濃度をリアルタイムで解析する「ブレス・バイ・ブレス法」が主流です。
測定を担当するスポーツ医科学の検査技師は、マスクの隙間からのわずかなエアリーク(空気漏れ)や、測定前の厳密な標準ガス校正(キャリブレーション)に細心の注意を払います。わずか数%の呼気ガス濃度誤差が、脂質燃焼と糖質燃焼の比率計算を大きく狂わせてしまうからです。