歯医者の麻酔でなぜ動悸が?突然の胸の苦しさと手の震えを防ぐ全知識
歯医者の麻酔でなぜ動悸が?突然の胸の苦しさと手の震えを防ぐ全知識について徹底解説いたします。詳細な分析をご覧ください。
動悸の問題が極めてクリティカルな意味を持つのが、基礎疾患に心血管障害を抱えるシニア世代や有病者です。日本歯科麻酔学会が策定する安全性評価基準において、高血圧患者の歯科麻酔リスクと最新ガイドラインは非常に厳密な数値管理を求めています。
高血圧症を放置している患者、あるいは治療中であっても血圧コントロールが不良(収縮期血圧160mmHg以上、または拡張期血圧100mmHg以上)のケースでは、通常のアドレナリン含有麻酔薬を無制限に使用することは禁忌とされます。虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞の既往)や重篤な不整脈がある患者に対して外来性アドレナリンを過剰投与すると、冠動脈の攣縮や心筋酸素消費量の増大を招き、重大な循環動態の破綻を誘発しかねないためです。
日本循環器学会および歯科麻酔関連ガイドラインが定める、心疾患患者に対するアドレナリンの1回安全投与限度量は「0.04mg(40マイクログラム)」です。これを1:80,000希釈の一般的な歯科麻酔カートリッジ(1.8mL/本)に換算すると、およそ1.7本分(約3.2mL)に相当します。健常者であれば5〜8本程度まで安全に使用できるのに対し、リスク患者ではわずか2本未満がデッドラインとなる計算です。
そこで、近年の歯科医療現場において標準的な選択肢として確立されたのが、アドレナリン非配合麻酔スキャンドネスト(一般名:3%メピバカイン塩酸塩)の導入です。
スキャンドネストは、血管収縮薬であるアドレナリンを一切配合していません。メピバカイン自体が血管を拡張させにくい独特の化学構造を有しているため、血管収縮薬を添加しなくても一定の麻酔持続性を発揮します。心臓のβ受容体を直接刺激しないため、注射直後にあの嫌な動悸や血圧跳ね上がり、手の震えが起こるリスクを物理的にゼロへと抑え込むことが可能です。
ただし、アドレナリン配合薬に比べると組織滞留時間が短く、麻酔効果の持続時間は約20〜40分程度に留まります。大がかりな親知らずの難抜歯や長時間の歯根端切除術には不向きですが、通常の虫歯治療、歯髄炎の処置、簡単な抜歯であれば、身体への負担を劇的に軽減できる切り札として重宝されています。