坂本龍一が残した「最後の一音」——没後3年、がん闘病の記憶と彼が変えた日本のがん観
話題沸騰中の 坂本龍一が残した「最後の一音」——没後3年、がん闘病の記憶と彼が変えた日本のがん観について、多角的な視点を整理して公開しています。
2014年の中咽頭がん発症、そして2020年の直腸がん判明。相次ぐ難病の宣告を受けながらも、坂本龍一氏の視線は最後まで冷徹なまでに「表現」へと向けられていた。体力を削られる抗がん剤治療や幾度におよぶ手術を重ねるなかで、彼が選択したのは隠遁ではなく、自らの肉体の衰えすらも音として捉え直す壮絶な試みだった。
「残された時間で、あと何曲書けるだろうか」。スタジオに持ち込まれた点滴スタンドと鍵盤。病室でメモされたスケッチ。死を意識することで研ぎ澄まされたその音色には、悲壮感ではなく、命の原点に立ち返ったような澄み切った静寂が宿っていた。