栄誉とは何か?名誉・栄光との決定的な違いと授与の裏側を徹底解剖

栄誉とは何か?名誉・栄光との決定的な違いと授与の裏側を徹底解剖の疑問点について、専門知識を取りまとめてご紹介します。

日本国内で最もニュース価値の高い表彰制度といえば、内閣総理大臣が授与する国民栄誉賞です。しかし、その誕生の経緯と国民栄誉賞基準を精査すると、法的に厳密に規定された叙勲制度とは異なる、きわめて柔軟で政治的な性格が見えてきます。

国民栄誉賞は1977年(昭和52年)8月、当時の福田赳夫内閣のもとで「国民栄誉賞創設について」(昭和52年8月30日閣議決定)および「国民栄誉賞表彰規程」(昭和52年8月30日総理府告示第30号)によって創設されました。その直接の契機となったのは、プロ野球の読売ジャイアンツに所属していた王貞治選手が、メジャーリーグのハンク・アーロンが保持していた通算本塁打世界記録(755本)を更新したことです。

当時、従来の栄典制度(叙勲や褒章)は年齢制限や長年の継続的な功労を要件としており、30代の現役プロスポーツ選手に贈る適当な枠組みが存在しませんでした。そこで「国民的英雄の偉業を迅速に称える新たな制度」として急遽創設された背景があります。

公式文書に定められた表彰基準は極めてシンプルです。

「広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があった者について、その栄誉を讃えることを目的とする。」(国民栄誉賞表彰規程第1条)

具体的に「世界新記録を樹立したこと」や「何年間活動したこと」といった数値基準は一切ありません。選考手順としては、内閣総理大臣が表彰の趣旨に合致すると認める候補者について、民間有識者で構成される意見聴取会に意見を求め、その答申を踏まえて内閣総理大臣自らが最終決定を下します。

制度創設に関わった関係省庁のOBや政治ジャーナリストの証言によれば、この「広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えた」という抽象的な要件こそが、歴代官邸にとって最大の武器であり、同時に議論の火種となってきました。明確な数値基準が存在しないため、授与のタイミングが政権浮揚を狙った支持率対策ではないかと批判を浴びるケースが少なくありません。政治権力と大衆の熱狂が交差する結節点に、この賞の本質が存在しています。

加藤 愛美

加藤 愛美

エンタメ専門ジャーナリスト

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。

Share this article
Twitter Facebook Pinterest