四次方程式の解の公式はなぜ使えない?実用不能の真相と導出の歴史
四次方程式の解の公式はなぜ使えない?実用不能の真相と導出の歴史の真相や最新動向に迫る! 専門的な視点でご紹介しています。
実用が難しいとはいえ、四次方程式の解の公式を導く論理構成は息をのむほど洗練されています。この解法を1540年に見出したのは、当時弱冠18歳前後だったイタリアの数学者ルドヴィコ・フェラーリ(Ludovico Ferrari)でした。彼の師であるジローラモ・カルダノが1545年に出版した名著『アルス・マグナ(偉大なる術)』によって世に知られることになります。
フェラーリが考案した「フェラーリの解法」の真髄は、解けない高次方程式を、すでに解法が確立していた「三次方程式への帰着」によって攻略した点にあります。その導出の経緯は、主に以下の3つのステップで進められます。
ステップ1:チルンハウス変換による「3次の項」の消去
一般の四次方程式 \( ax^4 + bx^3 + cx^2 + dx + e = 0 \) の両辺をまず \( a \) で割り、最高次の係数を1にします。次に、変数変換 \( x = y - \frac{b}{4a} \) を施します。この巧妙な置換(チルンハウス変換)を行うと、展開時に3次の項が相殺されて綺麗に消滅し、次のような「立方欠損形(3次の項がない形)」の四次方程式が得られます。
\[ y^4 + py^2 + qy + r = 0 \]
ステップ2:補助変数の導入と「完全平方」の創出
ここからがフェラーリの真骨頂です。式を変形して \( y^4 + 2py^2 + p^2 = py^2 - qy - r + p^2 \) とし、左辺を \( (y^2 + p)^2 \) の形にします。しかし、これだけでは右辺が \( y \) の完全平方式(何かの2乗)になるとは限りません。そこで、新たな未定の補助変数 \( u \) を導入し、左辺に無理やり \( u \) を組み込みます。
\[ (y^2 + p + u)^2 = (2u + p)y^2 - qy + (u^2 + 2pu + p^2 - r) \]
この右辺は \( y \) に関する二次式です。二次式 \( Ay^2 + By + C \) が完全平方 \( (\text{一次式})^2 \) の形になるための条件は、その判別式がゼロ(\( B^2 - 4AC = 0 \))になることです。
ステップ3:三次方程式(分解方程式)を解き、二次方程式へ分解
判別式 \( (-q)^2 - 4(2u + p)(u^2 + 2pu + p^2 - r) = 0 \) を整理すると、なんと導入した補助変数 \( u \) に関する三次方程式(これを四次方程式の分解方程式、または奇異方程式と呼びます)が姿を現します。
三次方程式であれば、先行して発見されていた「カルダノの公式」を用いることで、代数的に \( u \) の解を1つ確実に求めることができます。適切な \( u \) が1つ決まれば、方程式全体は次のような「(二次式)の2乗 =(一次式)の2乗」という形に変形できます。
\[ (y^2 + p + u)^2 = \left( \sqrt{2u + p}\, y - \frac{q}{2\sqrt{2u + p}} \right)^2 \]
あとは両辺の平方根を取り、\( A^2 = B^2 \iff A = \pm B \) として整理すれば、最終的に2つの二次方程式へと完全に分解されます。それぞれの二次方程式を中学校で習う解の公式で解くことで、四次方程式の4つの解がすべて導出されるのです。
もう一つの視点:デカルトの解法
なお、フェラーリの解法と並んで有名なのが、哲学者としても名高いルネ・デカルトが考案した「デカルトの解法」です。デカルトは3次の項を消去した四次式を、2つの二次式の積 \( (y^2 + ky + m)(y^2 - ky + n) = 0 \) に因数分解することを試みました。係数を比較することで \( k^2 \) に関する三次方程式を導き出し、そこから解を得る手法です。アプローチは異なるものの、最終的に「三次方程式に帰着させる」という本質はフェラーリの解法と完全に一致しています。