ギブス』歌詞の深層|椎名林檎が隠したカートへの狂気の愛とは?

ギブス』歌詞の深層|椎名林檎が隠したカートへの狂気の愛とは?とはどのようなものなのか? 詳しい意味を丁寧に紐解いて紹介します。

本楽曲を語る上で欠かせない最大の固有名詞が、2番の歌詞に登場する「カート」と「コートニー」です。

「あなたはすぐに いじけて見せたがる あたしは何時も 其れを喜ぶの だってカートみたいだから あたしがコートニーじゃない」

このギブス カート コートニー 元ネタは、90年代のグランジ・ロックシーンを牽引した伝説的バンド「ニルヴァーナ(Nirvana)」のフロントマンであるカート・コバーン(Kurt Cobain)と、ロックバンド「ホール(Hole)」を率いた妻のコートニー・ラブ(Courtney Love)です。

二人は世界中から熱狂的な支持を受ける一方で、重度のドラッグ禍や激しい愛憎劇、スキャンダルに塗れた「破滅的で狂気的な愛」の代名詞として知られていました。繊細で傷つきやすく、時に殻に閉じこもる恋人の姿をカートに重ね、その隣で泥沼を共に歩む伴侶としての自分をコートニーに見立てる――。そこには、ただ甘いだけの関係ではなく、相手の弱さや狂気ごと抱え込み、共倒れすら辞さない覚悟が込められています。

さらに歌詞の後半には「また四月が来たよ 同じ日のことを思い出して」という象徴的な一節が現れます。カート・コバーンが自ら命を絶ったのは1994年4月5日(発見日は4月8日)。四月という季節は、日本における出会いと別れの象徴であると同時に、グランジを愛した世代にとって決定的な喪失が刻まれた月でもあります。自身の個人的な追憶と、敬愛するロックスターの命日をクロスフェードさせる緻密な筆致は、単なる私小説的バラードの枠を超えた凄みを感じさせます。

山口 彩花

山口 彩花

写真家・フォトエディター

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。

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