ゴッホのひまわり全7作の真実|幻の焼失画と53億円名画の鑑賞術
ゴッホのひまわり全7作の真実|幻の焼失画と53億円名画の鑑賞術を詳しくリサーチ! 読者が気になる 情報と解説を分かりやすく展開します。
芦屋の悲劇から40余年を経た1987年3月、ロンドンのクリスティーズで開かれたオークションが世界を震撼させました。安田火災海上保険(現・損害保険ジャパン)が、ゴッホの『ひまわり(第6作)』を3,992万1,750ドル(当時のレートで約53億円、諸経費込みで約58億円)で落札したのです。一作家の絵画に対する史上最高額の更新は、日本のバブル経済を象徴する出来事として世界中のメディアでトップニュースとなりました。
「なぜ保険会社が巨額を投じて名画を買うのか」という世論の喧噪の中、同社は「多くの日本人に本物の世界的名画を鑑賞してほしい」という理念を貫き、現在のSOMPO美術館(東京・新宿)の常設展示の目玉として一般公開を続けました。
しかし1990年代後半、イギリスの美術ジャーナリストらによって「安田のひまわりは、ゴッホの友人であった画家エミール・シェッフェネッケルによる精巧な贋作ではないか」という疑惑が報じられ、世界的な大論争へと発展します。この疑惑を晴らすため、SOMPO美術館は絵画をオランダのアムステルダム・ファン・ゴッホ美術館へ送り、数年にわたる徹底的な学術調査に委ねました。
ファン・ゴッホ美術館の研究チームが下した判定は、完全なる「真作」でした。決め手となったのは、以下の客観的・科学的証拠です。
- キャンバスの同一性:ゴッホがアルル滞在時に画材店から購入したロールキャンバス特有の織り目や糸の密度が、同時期に描かれた他の真作と完全に一致したこと。
- 顔料と筆跡の固有パターン:ゴッホ特有の筆触(インパスト)の下層構造から、彼が使用していたチューブ絵の具の鉱物組成、およびゴッホ自身の手による下絵の修正痕(ペンティメント)がX線解析で確認されたこと。
- 手紙の記録との符合:弟テオとの書簡に「もう1点のひまわりを仕上げた」と記された時期・描写と完全に合致すること。
2001年の正式報告により疑惑は完全に雲散霧消し、新宿に鎮座する『ひまわり』は、名実ともに日本が世界に誇る至高のオリジナル・マスターピースとして揺るぎない地位を確立しました。