漱石『吾輩は猫である』初版本の現在価値は?相場と見分け方を徹底解剖
漱石『吾輩は猫である』初版本の現在価値は?相場と見分け方を徹底解剖とは一体何なのか? 主要なファクトを丁寧に紐解いて紹介します。
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本作の初版本が古書愛好家だけでなく美術関係者からも高く評価される理由は、その息を呑むほど美しい装丁にあります。装丁を手掛けたのは、後に新版画の旗手として世界的な名声を得る橋口五葉です。当時、東京美術学校を卒業したばかりの五葉の才能を漱石が見出し、自由なデザインを全面的に任せました。
上巻の表紙には、金箔押しで描かれた優美な猫の意匠が施され、当時のヨーロッパで流行していたアール・ヌーヴォー様式が見事に融合しています。中巻は落ち着いた色調の中に繊細な植物文様があしらわれ、下巻では朱色を基調とした大胆な構図が採用されるなど、3巻それぞれが独立した美術品のような完成度を誇ります。
挿絵や扉絵、見返しの用紙選定に至るまで、五葉の徹底した美意識と職人技が凝縮されており、近代日本のブックデザインにおける金字塔と称されています。単なる「古い本」の枠を超え、明治の工芸技術を結集した工芸的価値を有している点こそが、本初版本が他の文学作品と一線を画す最大の理由です。