ゆりかごから墓場までの本当の意味とは?イギリス社会保障の光と影
ゆりかごから墓場までの本当の意味とは?イギリス社会保障の光と影についての真相をご紹介します。
高邁な理想を掲げてスタートした福祉国家イギリスでしたが、1960年代後半から1970年代にかけて深刻な制度疲労に直面します。これが歴史上知られる「イギリス病(British disease)」です。
手厚い社会保障と基幹産業の国有化は、一見すると格差のない安定した社会を生み出すように見えましたが、構造的な矛盾を抱えていました。その決定的な要因は以下の3点に集約されます。
- 過度な税負担と勤労意欲の低下:福祉財源を維持するための高福祉・高負担政策により、所得税の最高税率が80%を超える事態となり、企業の投資意欲や労働者の向上心が削がれました。
- 手厚い失業給付による「モラル・ハザード」:働かなくても一定の生活水準が維持される仕組みが定着した結果、求職活動を積極的に行わない層が増加し、生産性の低下を招きました。
- 膨らみ続ける医療費と公的債務:医療を完全に無料化したことで受診のハードルが極端に下がり、医療機関のキャパシティを超える需要が殺到。財政赤字は天文学的な規模へと拡大しました。
経済成長率の低下とインフレーション、頻発する労働組合のストライキによって国家財政は破綻寸前に追い込まれ、1976年には国際通貨基金(IMF)の緊急融資を受ける屈辱を味わいます。この行き詰まりを打破するために1979年に登場したのがマーガレット・サッチャー首相であり、彼女は「小さな政府」を掲げて国営企業の民営化や福祉支出の抑制を強行しました。