浅田彰『構造と力』はなぜ爆発的に売れた?難解思想の真相を解説
浅田彰『構造と力』はなぜ爆発的に売れた?難解思想の真相を解説の基礎知識と応用に迫る! 専門的な視点でご紹介しています。
インターネット上の言説において、『構造と力』は「バブル期の一過性の知のファッションに過ぎなかった」「中身のない言葉遊びだった」と断定されるケースが散見されます。しかし、この見方は思想史的な達成を著しく見誤っています。
本書の真の独創性は、難解なポストモダン思想を日本に単に輸入・紹介したことではなく、「構造」という静的システムの限界を冷徹に見抜き、それを内部から突き破る「力」の回路を提示した点にあります。マルクス主義がリアリティを失い、かといって無批判な資本主義賛美にも与しない第三の道として、システムと戯れつつシステムをずらす批評的手法を確立したのです。
また、「浅田彰自身が逃走を推奨したことで、若者の無責任な快楽主義を生んだ」という批判も根強い誤解のひとつです。浅田氏自身が当時のインタビューで語っている通り、「逃走」とは責任放棄や現実逃避ではなく、「制度や権力による同一化の暴力から、身を挺して距離を取り続けるという過酷な緊張関係」を意味していました。消費社会の波に呑まれる過程で、その戦闘的な毒気が都合よく脱色され、「気楽な消費生活の肯定」へとスライドされてしまったのが実態です。