しきびとは?榊との違いや仏事で供える理由・毒性の真実
しきびとは?榊との違いや仏事で供える理由・毒性の真実とはどんな影響があるのか? 専門的な分析を丁寧に紐解いて紹介します。
しきびは、マツブサ科(旧シキミ科)シキミ属に属する常緑小高木で、標準和名を「シキミ」と呼びます。漢字では「樒」のほか「梻」と表記され、地域によって「しきび」「はなのき」「こうのき」など多様な呼び名が存在します。
「しきみ」の語源には諸説あります。一年中青々とした葉を保つことから「四季美(しきび)」と名付けられたとする説、実の形状が何重にも重なり合っている様子から「重実(しきみ)」と呼ばれた説、そして後述する猛毒を持つことから「悪しき実(あしきみ)」が転じたとする説です。
仏事においてしきびが重用されるようになった背景には、仏教の精神的な意味合いと、先人たちの極めて合理的な生活の知恵が融合した歴史があります。
第一に、土葬時代における防獣・防臭の役割です。火葬が一般的でなかった時代、遺体を土中に埋葬した際、狼や野犬、カラスなどの野生動物が遺体を掘り起こす被害が深刻でした。そこで、強い芳香と猛毒を持つしきびの枝葉を墓の周囲に敷き詰めることで、獣を寄せ付けない防壁として活用したのです。
第二に、「抹香(まっこう)」や線香の原材料としての側面です。しきびの樹皮や葉を乾燥させて粉末にしたものは古くから抹香として利用され、読経の際に焚かれたり、遺体の腐敗臭を消す清浄剤として重宝されてきました。独特の清涼感ある香気は邪気を払い、場を清める「魔除け」の象徴として仏教儀礼に定着していきました。