葛西臨海水族園マグロ大量死の真相と現在|謎の原因と復活劇を追う
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事件の発端は2014年11月上旬でした。当時、葛西臨海水族園のドーナツ型大水槽(水量2,200トン)には、クロマグロ約60尾に加え、近縁種であるスマやハガツオなど合計で160尾を超える回遊魚が優雅に群泳していました。ところが、まずスマやハガツオが相次いで死に始め、その異変は12月に入ると水槽の主役であるクロマグロへと波及しました。
年末から年明けにかけての減少スピードは異常でした。日に数尾から十数尾単位で死亡が確認され、水槽から次々と巨体が引き揚げられる異様な光景が連日報道されました。2015年1月中旬には30尾を割り込み、2月には5尾、そして2015年3月24日にはついに「最後の1尾」を残すのみという壊滅的な状況に追い込まれたのです。
東京都および水族園を運営する東京動物園協会は、大学教授や病理解析の専門家を招聘し、徹底した原因究明調査チームを立ち上げました。水質、照明、騒音、餌の成分、病理解剖などあらゆる角度から検証が進められた結果、2015年秋に公表された公式調査報告書は、単一の事故ではなく「複数の悪条件が連鎖した複合的要因」であったと結論づけました。
病理解剖において、死亡した個体から脾臓や脳組織への病変が確認され、細胞内寄生虫であるアピコンプレクサ類や、魚類特有のウイルス性神経壊死症(NNV)に極めて近いウイルスの痕跡が検出されました。これらは通常、直ちに成魚を即死させるほどの強い毒性を持つものではありません。しかし、水槽の照明設備やアクリルガラス外面の工事に伴う微細な振動、さらには群れの仲間が次々に姿を消していくことによる極度のストレスが、魚たちの免疫力を著しく低下させたと分析されています。
そして何より直接的な致死因となったのが、パニック状態に陥ったマグロたちのアクリルガラス面や擬岩への高速衝突でした。マグロは自重数十キロから百キロを超える巨体でありながら、時速数十キロで突進します。方向感覚を失ったマグロが壁面に激突し、脊椎骨折(背骨の脱臼・骨折)を起こして即死するケースが多発していたことが、レントゲン撮影や解剖結果から明白な事実として突き止められました。