なぜ吹上庵は行列が絶えない?峠なべ&黒豚カツ丼が地元で愛される「3つの真相
なぜ吹上庵は行列が絶えない?峠なべ&黒豚カツ丼が地元で愛される「3つの真相の基礎知識と応用に迫る! 専門的な視点で紐解きます。
吹上庵を語る上で欠かせないのが、本州の蕎麦処とは一線を画すつゆの味わいだ。関東風の醤油とみりんがキリリと効いた辛口つゆに慣れた人が初めて口にすると、その柔らかな甘みと濃密な魚介の香りに驚愕する。ここに隠された吹上庵そばつゆの真相を探ると、南九州の歴史的風土と調味料の進化が色濃く反映されている。
だしに使われる鰹節は、世界的な産地として名高い鹿児島県産の本枯節や荒節を惜しみなく配合。煮干しや昆布とともにじっくりと抽出されただしは、雑味がなく驚くほど澄んだ旨味を放つ。そこへ合わされるかえしには、南九州特有の甘口濃口醤油と熟成みりんが用いられる。薩摩藩時代からの砂糖文化と温暖な気候が育んだ「甘みを旨味として愛でる食習慣」が、このつゆの設計思想の根底にある。
甘いだけでなく、鰹節のイノシン酸が力強く土台を支えているため、後味が決して重くならない。うどんやそばの麺をすすり終えた後、丼を持ち上げてスープを最後の一滴まで飲み干す客が続出するのは、塩角が立たず素材由来のまろやかさで満たされている証左だ。