Tbs元社長・井上弘の功績と生涯|楽天買収防衛劇と現在への遺産
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井上弘氏の経営者人生において、最大のハイライトとして日本経済史に刻まれているのが、2005年秋に勃発した楽天(三木谷浩史会長兼社長)との買収防衛戦です。当時、インターネットとテレビの融合を掲げた新興IT企業による既存メディアへの攻勢が激化しており、フジテレビを揺るがしたライブドア事件に続き、TBSがターゲットとなりました。
2005年10月、楽天はTBS株式の約19.09%を秘密裏に買い集め、突如として経営統合を提案。これに対し、井上社長(当時)は一切の妥協を許さない毅然とした態度で臨みました。記者会見において井上氏は、単なる感情論ではなく「放送法が定める不偏不党の報道姿勢」と「特定企業によるメディア支配の危険性」を論理的に展開し、世論と民放各社の支持を取り付けました。
井上氏が取った戦略の白眉は、ただ時間を稼ぐだけでなく、2008年の電波法・放送法改正を味方につけ、2009年4月に「株式会社東京放送ホールディングス」として日本初の認定放送持株会社制へ移行した点にあります。持株会社化に伴い、楽天側は株式買取請求権を行使せざるを得なくなり、約3年半に及ぶ熾烈な攻防戦はTBS側の完全勝利で幕を閉じました。