深浦加奈子が座ったままで演じ切った理由|遺作と車椅子の女優魂

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その象徴的な舞台となったのが、テレビ朝日系で放送された木曜ミステリー『その男、副署長〜京都河原町署事件ファイル〜』(season2、第8話)のロケ現場でした。撮影が行われたのは、彼女が息を引き取るわずか1ヶ月前の2008年7月のことです。

当時の報道や関係者の証言によると、深浦さんは自力で移動することができず、ロケ現場の控室からセットまでは車椅子に乗って移動していました。顔色は青白く、呼吸を整えるだけでも苦しい限界的な体調であったことは誰の目にも明らかでした。主演を務めた船越英一郎さんをはじめとするキャストやスタッフ陣は、その痛々しい姿に息を呑んだといいます。

ところが、本番の声がかかり、車椅子から芝居用のベンチへと移った瞬間、空気は一変しました。背筋をすっと伸ばし、カメラを見据える瞳には鋭い光が宿り、台詞の抑揚や細かな表情の機微に至るまで、体調不良を微塵も感じさせない完璧な芝居を披露したのです。監督の「カット」がかかった途端に激痛で表情を歪める深浦さんの姿に、共演者たちは涙をこらえながら女優としての底知れぬ凄みを見せつけられたと回顧しています。

この第8話が放送されたのは2008年8月21日。そしてそのわずか4日後となる8月25日夜、深浦さんは都内の病院で家族に看取られながら静かに旅立ちました。享年45。画面の中で見せた凛とした姿が、実質的なテレビドラマにおける最後の遺作となったのです。

伊藤 翔太

伊藤 翔太

フード&トラベルライター

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。

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