下壁梗塞の心電図で命を救う!St上昇と合併症の急所を徹底解説

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下壁梗塞を巡る医療現場のリアルな証言や臨床報告において、最も恐れられている落とし穴が「右室梗塞の合併」と「房室伝導障害」の同時多発です。救急現場で下壁梗塞の波形を確認した瞬間、単に冠動脈インターベンションの準備をするだけでなく、右室心筋の虚脱を予見した手技選択が求められます。

心電図上で察知すべき下壁梗塞右室梗塞合併のサインは、まず前胸部誘導のV1誘導におけるST上昇です。通常の下壁梗塞では前胸部誘導(V1〜V3)に後壁のミラーイメージとしてST低下が出現しやすいのに対し、V1誘導のみが持ち上がっている、あるいはV1のST上昇がV2のST上昇よりも高い場合は、右冠動脈の極めて根元(近位部:セグメント#1)が閉塞している可能性を決定的に示唆します。

ここで極めて重要な手順となるのが、右側胸部誘導V4R記録理由の根本理解です。標準の12誘導心電図はすべて左心室を観察するために設計されており、薄い右室自由壁の起電力は強力な左室の波形に埋もれてしまいます。そこで電極を胸骨の右側に対称配置し、右室前面を直接見据える右側胸部誘導(特に右鎖骨中線と第5肋間の交点に貼付するV4R)を記録します。V4Rにおける0.5〜1.0mm以上のST上昇は、右室梗塞の診断において感度・特異度ともに90%を超える極めて信頼性の高い診断指標です。

救命救急の現場で絶対に侵してはならない禁忌が、「下壁・右室梗塞に対する安易な血管拡張薬(ニトログリセリン等)の投与」です。右室が機能不全に陥ると、右室は血液を肺へ送り出せず、左室への血流(前負荷)に完全に依存した綱渡りの血行動態となります。この状況下で狭心痛緩和の目的でニトログリセリンや利尿薬を投与すると、全身の静脈還流量が激減し、一瞬で心拍出量が底をついて不可逆的な心原性ショック(重篤な血圧低下)へと急変します。右室梗塞が疑われる場合の第一選択は、血管拡張薬ではなく十分な細胞外液の急速輸液(前負荷の確保)であるという原則を、チーム全体で徹底共有しなければなりません。

さらに警戒すべきは、下壁梗塞房室ブロック合併の危険性です。房室結節を栄養する房室結節枝(AV nodal artery)は、大部分が右冠動脈の末梢(遠位部:セグメント#4AV)から分岐します。下壁梗塞患者の約15〜20%に房室ブロックが発症し、急激な徐脈や完全房室ブロック(三度房室ブロック)からアダムス・ストークス発作を引き起こします。前壁梗塞に伴うブロックと異なり一時的な虚血によるものが多く、迅速な血行再建やアトロピン投与、経皮的ペーシングのスタンバイによって回復する見込みが高いものの、搬送中・処置中の突然の心停止トリガーとして厳重な監視が義務付けられます。

井上 凛

井上 凛

シニアコンテンツプロデューサー

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。

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