あくびで涙が出るのはなぜ?悲しくないのに溢れる体の仕組みと病気のサイン
あくびで涙が出るのはなぜ?悲しくないのに溢れる体の仕組みと病気のサインの真相について、専門知識を詳しくお届けします。
あくびと涙の結びつきは、筋肉による物理的圧迫だけにとどまりません。脳と神経系が織りなす「眠気とあくびと涙の生理現象」という内分泌・神経学的なルートが深く関与しています。
かつては「あくびは血中酸素濃度の低下を補うために起こる」と信じられていましたが、近年の脳神経科学では、疲労や眠気によって温度が上昇した脳を冷却するための生体反応(脳冷却仮説)として説明されることが主流です。覚醒度が下がり、活動を司る「交感神経」からリラックスを司る「副交感神経」へと切り替わる遷移期に、脳幹の網様体や視床下部が刺激されてあくびが誘発されます。
涙の基礎分泌および反射性分泌を直接コントロールしている自律神経は、まさにこの副交感神経(顔面神経由来の上唾液核・翼口蓋神経節ルート)です。あくびを引き起こす脳幹のシグナルは、眼輪筋を収縮させる顔面神経の運動枝を刺激すると同時に、副交感神経線維を通じて涙腺への分泌命令を瞬時に増幅させます。
つまり、あくびをする瞬間、私たちの体内では「副交感神経の急激な興奮による涙の大量分泌」と「顔面筋の収縮による涙嚢の機械的圧迫」という二重のプロセスが同時多発的に発生しているのです。感情を司る大脳辺縁系を通さずとも、神経反射と筋肉の連動だけで大粒の涙がこぼれ落ちるのはこのためです。