ドレミファソラシドの英語表記はなぜCから?シがTiの真相と完全対照表
ドレミファソラシドの英語表記はなぜCから?シがTiの真相と完全対照表の詳細について、専門知識を詳しくお届けします。
英語圏の音楽教室やミュージカルを体験した人が直面するもう一つの謎が、「シ」の発音です。英語圏のソルフェージュ(階名唱法)では、「Do - Re - Mi - Fa - Sol - La - Ti」と歌われます。なぜ「Si」ではなく「Ti」になったのか、そこには教育現場での合理的な改良ドラマがありました。
そもそも「ドレミファソラ」という音節は、11世紀イタリアの修道士グイード・ダレッツォが考案したものです。彼は聖ヨハネの誕生日のために作られた賛歌『Ut queant laxis(汝の僕が)』の各行の冒頭が、1音ずつ段階的に高くなって歌われることに着目しました。
当時の歌詞の頭文字は「Ut(ウト)・Re(レ)・Mi(ミ)・Fa(ファ)・Sol(ソル)・La(ラ)」の6音でした。しかし、最初の「Ut」は母音で終わり息が詰まりやすいため、17世紀にイタリアの音楽理論家ジョヴァンニ・バッティスタ・ドーニらが、ラテン語で「神」を意味する「Dominus」の頭文字を取って「Do(ド)」へと改変しました。また、賛歌の結びである「Sancte Iohannes」の頭文字を組み合わせて7番目の音「Si(シ)」が後から追加されたのです。
このイタリア式ドレミが19世紀のイギリスに渡った際、決定的な問題が浮上します。1830年代、イギリスの音楽教育者サラ・グラバー(Sarah Glover)と、その手法を普及させた牧師ジョン・カーウェン(John Curwen)は、子供たちが楽譜を素早く読めるよう、頭文字1文字だけで階名を書き表す「トニック・ソルファ法」を開発しました。
ここでアルファベットを割り振ると、致命的な衝突が生じました。
- Do → D
- Re → R
- Mi → M
- Fa → F
- Sol → S
- La → L
- Si → S(※SolのSと重複する)
5番目の「Sol」と7番目の「Si」が、どちらも同じ「S」になってしまい、略記した際に判別がつかなくなってしまったのです。そこでサラ・グラバーは、子音を「T」に変えて「Ti(ティー)」と呼ぶアイデアを導入しました。これにより「D・R・M・F・S・L・T」という完全に独立した記号体系が完成しました。映画『サウンド・オブ・ミュージック』で「Ti is a drink with jam and bread(紅茶はジャムパンに合う飲み物)」と韻を踏んで歌われているのは、この教育改革が英語圏全土に定着した結果です。