なぜ今あえてキャブ車のバイクに乗るのか?Fiとの違いと維持費の真相

なぜ今あえてキャブ車のバイクに乗るのか?Fiとの違いと維持費の真相の基礎知識と応用に迫る! 専門的な視点でご紹介しています。

バイクのエンジンに燃料を送り込む機構において、キャブ車とFI車の決定的な違いは「燃料の計量と噴射を物理法則に任せるか、電子制御で行うか」という基本アーキテクチャにあります。

キャブレター(気化器)は、エンジンがピストン下降時に生み出す吸入負圧とベンチュリ効果(流速が上がると圧力が下がる物理現象)を利用し、ガソリンを機械的に吸い出して霧化します。気圧、外気温、湿度、標高などの自然環境に燃料供給量がダイレクトに左右されるため、例えば標高2,000メートルの峠道に登ると空気が薄くなり、混合気が濃くなってボコつきが生じるなど、環境の変化がそのままエンジンの挙動に現れます。

一方のFI(フューエルインジェクション)車は、吸気圧センサー、吸気温センサー、スロットルポジションセンサー、O2センサーなどがエンジンの状態をミリ秒単位で検知し、ECU(エンジンコントロールユニット)の緻密な計算に基づいてインジェクターから最適量の燃料を高圧噴射します。氷点下の朝であっても、標高差のある山岳路であっても、ライダーが意識することなく理想空燃比に近い燃焼を維持できる極めて完成された機構です。

それにもかかわらずキャブ車が選ばれる背景には、スロットルを開けた瞬間に吸気管内の負圧変化を通じて燃料がダイレクトに吸い出される「機械的なリニア感」があります。ECUによる排出ガス規制対策の補正が入らないため、ライダーの右手と後輪がダイレクトにつながっているような生々しいトラクションフィーリングを味わえる点が、純粋な操縦性を愛するファンを魅了し続けています。

山口 彩花

山口 彩花

写真家・フォトエディター

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。

Share this article
Twitter Facebook Pinterest