食パンくわえて走る元祖は存在しない?遅刻テンプレ発祥の歴史と真相
食パンくわえて走る元祖は存在しない?遅刻テンプレ発祥の歴史と真相について徹底解説いたします。詳細な分析をお届けします。
なぜ実在が怪しいテンプレが、ここまで強固な共通認識となったのか。その鍵を握るのが、1990年代初頭の漫画表現論パロディと、社会現象となったアニメの存在です。
まず決定的な役割を果たしたのが、1990年に『ビッグコミックスピリッツ』で連載された相原コージ氏・竹熊健太郎氏による『サルでも描けるまんが教室』(通称:サルまん)です。同作の中で「少女漫画の第1回は、主人公がトーストをくわえて『ちこくちこくー』と走り、曲がり角で男とぶつかって『なによこの失礼なヤツ』と睨み合うのが鉄則」と解説されました。この強烈なメタ批評が漫画読みやクリエイターの間で大ヒットし、「そういうお約束がある」という言説が一気に広がったのです。
そして1996年3月、テレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の最終話(第26話)において、シンジが体験する「あり得たかもしれない日常の世界」が描かれます。そこで、普段は無口でクールな綾波レイが食パンをくわえて「遅刻遅刻〜!」と走り、交差点でシンジと派手に衝突するシーンが放映されました。
このシーンは、シリアスな本編とのギャップも相まって絶大なインパクトを残し、アニメファンのみならず一般層にまで「食パンくわえて走る=王道学園ラブコメの記号」という認識を決定づけました。パロディが元ネタの記憶を上書きし、元祖が存在しないまま定着した極めて稀有な現象と言えます。