成城五丁目猪股庭園はなぜ無料?吉田五十八の数寄屋名建築を徹底解明
成城五丁目猪股庭園はなぜ無料?吉田五十八の数寄屋名建築を徹底解明の疑問点について、分かりやすい解説を詳しくお届けします。
世田谷区成城といえば、大正末期から昭和初期にかけて成城学園の移転に伴い開発された、日本を代表する高級住宅街です。その成城五丁目に佇む猪股庭園は、もともといすゞ自動車の社長・会長を歴任した猪股猛(いのまた たけし)氏と、妻の貞代氏の私邸として1967年(昭和42年)に建てられました。
東京郊外の地価高騰や相続問題によって、昭和から平成にかけて多くの大邸宅が解体され、細分化された分譲住宅やマンションへと姿を変えていきました。しかし、猪股邸がその過酷な都市の波に呑まれることはありませんでした。夫妻が世を去った後、1999年(平成11年)に「貴重な緑地と邸宅をそのままの形で世田谷の街並みに残してほしい」という夫妻の強い遺志に基づき、土地・建物が世田谷区に寄贈されたからです。
現在、敷地の管理運営は公益財団法人「世田谷トラストまちづくり」が担当しています。区民の共有財産として保全するシチズントラスト(市民緑地信託)の理念に基づいているため、入館料は一切かからず完全無料で見学できるという破格の環境が維持されています。門前に立った瞬間から広がる静謐な空気は、一企業のトップが愛した私邸の歴史と、それを公共の遺産として後世に手渡した遺族の英断によって支えられています。