芥川賞作家・奥泉光の文学的迷宮を解く!知られざる創作の核心

芥川賞作家・奥泉光の文学的迷宮を解く!知られざる創作の核心の注目ポイントを分かりやすくまとめてご紹介します。

1993年に発表され、第110回芥川賞を受賞した『石の来歴』は、日本文学における戦争記憶の描き方を根底から更新した傑作だ。文藝春秋から刊行された本作において、舞台となるフィリピン・レイテ島での飢餓と殺戮の記憶は、主人公・愛坂の精神を鉱物めいた冷徹さで侵食していく。

多くの戦後文学が「心情の吐露」や「懺悔」に傾斜したのに対し、彼は記憶を無機質な石の集積として突き放してみせた。生々しい体験談を語るのではなく、記憶そのものが変容し、人間を異物へと作り変えていくプロセスを冷徹に描写する文体。この作品によって、純文学という領域が持っていた形式主義的な殻は大きく打ち破られた。

中村 さくら

中村 さくら

マネー&キャリアエディター

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。

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