瞳の奥に宿る野生と美!近代日本画の巨匠が描いた猫の傑作と真相
瞳の奥に宿る野生と美!近代日本画の巨匠が描いた猫の傑作と真相にまつわる役立つ知識を詳しく紐解きます。
近代日本画壇において、猫をモチーフにした二大巨塔といえば菱田春草の『黒き猫』と竹内栖鳳の『班猫』だ。いずれも重要文化財に指定され、今なお多くの美術ファンを惹きつけてやまない。
わずか36歳で夭折した天才・菱田春草が1910年に描き上げた『黒き猫』。死の影が忍び寄る中で描かれた柏の樹上の黒猫は、輪郭線を排した「没骨(もっこつ)技法」と、極細の筆で幾重にも塗り重ねられた毛描きによって構成されている。驚くべきは、黒一色に見える体毛に群青や紫が繊細に潜まされている点だ。観る者の角度によって濡れたような艶が変化し、まるでキャンバスの上で呼吸しているかのような錯覚をもたらす。
一方、京都画壇を牽引した竹内栖鳳の『班猫』には、画家と猫の運命的な出会いがあった。沼津の八百屋の店先で見かけた一匹の三毛猫に心を奪われた栖鳳は、店主に頼み込んで京都の自宅へ連れ帰ったという。猫を部屋に放し、寝食を忘れてその一挙手一投足を観察し続けた。背中を丸めて後ろを振り返る一瞬のポーズ、背骨の隆起、鋭い眼光。中国・宋代の院体画を思わせる精密描写と西洋のリアリズムが結実したこの作品は、まさに画家の偏執的な観察眼が生んだ奇跡といえる。