死の9日間「堂入り」を超えて。大阿闍梨・光永圓道が灯す命の道

死の9日間「堂入り」を超えて。大阿闍梨・光永圓道が灯す命の道の見逃せないポイントを一挙に解説しました。

千日回峰行のなかでも最大の関門とされるのが「堂入り」だ。700日を満行した行者だけに許されるこの儀礼は、比叡山の無動寺谷明王堂に籠もり、9日間にわたって一切の食事、水、睡眠、横になることを断ち、不動明王に真言を捧げ続ける。文字通りの生前葬であり、失敗すれば自ら命を絶つ覚悟で臨む過酷極まりない密教儀式である。

堂入りに入ると、肉体は日を追うごとに崩壊の兆候を見せ始める。3日目を過ぎると口内の粘膜が剥がれ落ち、うがい水の一滴すら喉を通すことは許されない。吐き出した水の量は厳密に計量され、1滴でも体内に入れば行は破綻する。5日目には皮膚から死臭に似た特有の臭気が漂い、意識と無意識の境界が溶け出していく。

驚くべきは、極限状態が生み出す超感覚だ。堂の壁一枚隔てた外で線香の灰がぽとりと落ちる音や、数キロ先を流れる谷水のせせらぎが、耳元で響くかのように明瞭に聴こえてくるという。生と死のあわいをさまよった光永師は、満行の瞬間に何を見たのか。それは神仏の顕現といった神秘体験などではなく、「生かされている自分」という抗いようのない冷徹な事実だった。

伊藤 翔太

伊藤 翔太

フード&トラベルライター

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。

Share this article
Twitter Facebook Pinterest